とにかく汗は、たくさんかけばいい、というものではありません。汗の基本中の基本は「いい汗をかく」ことです。「温度が高いほどいい汗をかく」でしょうか?「湿度が高いほどいい汗をかく」でしょうか?
そうではないのです。
そもそも汗の目的は、体温調節です。皮膚で汗が蒸発して熱を外に逃し、体温を下げているのです。もし汗をかいても、それが蒸発しなければ体温調節にはなりません。流れるだけのムダ汗つまり「悪い汗」です。ここを混同しないようにしてください。
私たちが、「汗をかいた」と意識するのは、汗が蒸発せずに皮膚に留まるときです。つまり、蒸発している汗より、肌の表面で粒になっている汗のほうが実感が強いのです。
湿度の設定は、温度管理より難しい間題です。私の資料では、全国の岩盤浴施設では、湿度に関しては50%~85%まで非常に幅が広く、ばらつきがありました。適切な湿度のスタンダードができるにはまだ時間がかかりそうです。
しかし、「汗との関係」に限って考えれば、一般化は可能です。
汗は「湿度が高いと出やすくなる」けれど「多湿のところに長くいると、遂に出にくくなる」傾向があります。
岩盤の湿度環境下でも同様です。
まず、前者の「湿度が高くなると汗が出やすくなる」理由です。
それには三つあります。
岩盤浴における温度や湿度の関係は、とても微妙な間題です。それは、温度や湿度の違いが、岩盤に使う鉱石の違いとともに、岩盤浴の施設の個性になるからです。ラーメン屋さんにとっての「メン」と「スープ」と「具」のような関係です。岩盤浴の施設ごとの「鉱石」×「温度」×「湿度」の3つの連携で、利用者の感じ方も微妙に異なってくるのです。
では、これぞ「ザ・岩盤浴」というような鉱石や温度・湿度環境はあるのでしょうか?
正直なところ、私にもまだわかりません。今のところは「ない」と答えておきましょう。
しかし、私はそれでよいと思います。なぜなら、岩盤浴は日本が生んだ「入浴文化」だからです。文化であるかぎり、その評価は文化を愛する人の「嗜好」の間題となります。
誰でも、夏暑くなって気温が上がると汗をかきますね。
しかし、汗と岩盤浴との切っても切れない関係を握る鍵の一つが、「暑くもないのになぜ汗が出るのか」、その理由です。
そもそも人は「暑いと感じるから汗をかく」のではありません。皮膚の温度や身体の深部の温度が高くなり、そこで発汗神経が刺激されて汗をかくのです。
人間が「暑いと感じる」体感温度は、気温だけではありません。外気からの「放射熱」にも影響されるのです。炎天下に長く駐車していた自動車の中やアスファルトの上、ゴルフ場のグリーン上が実際の気温より暑く感じるのは、それらが太陽から吸収した熱を放射しているからです。しかし、岩盤浴が主に放射しているのは遠赤外線やマイナスイオンです。岩盤浴室が実際の岩盤温度より暑く感じないのは、放射熱がさほど出ていないからです。
岩盤浴に使われる天然の鉱石には、非常に多くの種類があり、私自身も覚えきれないほどです。
岩盤浴の発祥の地、玉川温泉の鉱石は「北投石」と呼ばれる石です。北投石は、台湾の北投温泉で最初に発見された鉱物で、含まれる硫酸バリウムやラジウムなとがら微量放射線を放射する、非常に希少なものです。今では国の天然記念物に指定されていますので、北投石を採取することはできません。
天然の温泉地では、他には三朝温泉の「玄武岩」、増富温泉の「花尚岩」、二股温泉の「石灰岩」かじか有名です。
岩盤浴を利用した人にアンケートを取ると、「最初の入浴では、あまり温まった感じはしなかった」ところが「2~3回後から、芯まで温まるようになってきた」という回答が少なくありません。
それは、岩盤浴の温熱作用の仕方に理由があると思います。
私は、岩盤浴の温熱作用は三段階で進むと考えます。
第一段階は、温かい岩盤による直接の作用です。これは普通のお風呂や暖房機の温熱作用と同じです。つまり高温の岩盤からより低温の体に熱が物理的に移動する「熱伝導」の段階です。
第二段階は、岩盤に使われる鉱石から出る遠赤外線が、身体の深みに届いて、細胞に運動エネルギーを与えることです。これを「共鳴振動」といいます。身体の無数の細胞同士が摩擦しあって身体がまったりと温まる「自己発熱」の段階です。
第三段階は、体が温まったことで「代謝効率」が高まり、その結果さらに熱が発生して体温を高め、さらに代謝率が高まり、さらに熱が発生するという「自己熱のスパイラル」にいたる段階です。このスパイラルが、主に肝臓などの内臓や筋肉ではじまり、代謝をよくして血行が盛んになり、全身の組織へと温熱効果を広げる「血液循環」の段階も含まれます。
岩盤浴の温熱作用は、以上の三段階が総合された結果といえるでしょう。
人間が生きていけるのは、身体の細胞が絶えず新陳代謝をしているからです。この新陳代謝を切り盛りしているのは、酵素と呼ばれるタンパク質の仲間です。酵素の働きは、温熱作用で体が温まると活発になります。
ところが、この岩盤浴の温熱効果というのが、ただものではないのです。
皆さんは、「炭火焼」のサンマを食ぺたことがありますか。ガスの火で焼くと表面は焦げるはど焼けているのに中はナマ焼けだったりします。一方、炭火の場合は、芯までふかふかと火が通って、とても美味しく食べられます。これは炭火から遠赤外線が出ているからです。
岩盤浴の遠赤外線も同じです。入室して10数分で、身体の芯まで温まるのです。
岩盤浴の「隠し味」はマイナスイオンでした。一方、岩盤浴の「主役」は遠赤外線です。
ところで、遠赤外線ってなんでしょうか?
遠赤外線とは、文字通り「赤外線の中でも遠いところにある光線」という意味です。なんだかよくわかりませんね。
量子物理学(私の理解を超える領域です)では、全ての実在は量子の「波動」であるといいます。普通は、全ての「モノ」の構成要素の最小は「原子」ですね。それはさらに、「陽子」と「中性子」、前項でお話ししたマイナスイオンでもある「電子」に分かれます。ここまでは、全てカタチあるモノです。
マイナスイオンについては、岩盤浴に限らず、すでに生活の色々なところで利用されていますね。家電用品のお店に行けばマイナスイオン発生器もあり、あるいはマイナスイオンに関連した健康グッズも数多く開発されています。
けれども、あらためて「マイナスイオンつてなんだろう」と考えてみると、意外とわかりにくいものです。「イオンがどうして身体に関係するの?」というのが率直なところではないでしょうか?
イオンは目に見えません。ですから、正直なところ私にもうまく説明できません。でも、わたしたちの身体も人間が生活する地球もイオンの電磁的な活動が基本になっているのは事実です。
岩盤浴の条件は、とてもシンプルです。
私は汗の専門家として、「岩盤浴」を次のように定義しています。
自然の鉱石やプレート(岩盤)に熱を加えて、利用者がその上に横になることで生体への温熱効果を期待する(湯水のない)温浴法」というものです。プレートとは、加工されたもの、合成されたもの、またはそのままの岩盤や鉱石、いずれでも構いません。
ただし岩盤浴が、「発汗健康法」となるには絶対条件があります。
プレートや鉱石から少なくとも「遠赤外線とマイナスイオン」の両方が放射されていなければなりません。このニつの相乗作用でさまざまな生理活性が生ずるからです。どちらか片方では「発汗浴」としての岩盤浴とはいえないでしょう。
特に遠赤外線については、6~14ミクロンの波長の、生体にやさしい「育成光線」と呼ばれるものが主でなければなりません。