汗はなくてもいいの?

人間にはなぜ汗が必要なのでしょうか?

人間は、生きるためにエネルギーが必要です。そのためには食べなければなりません。食べたものを身体の中にある酵素が栄養素を分解したり、合成したり、そんなやりくり算段を代謝といいます。

代謝は、エ不ルギーを生み出す大事な活動です。それでも食べたものが全部エネルギーになるわけではありません。

例えば、骨格筋という骨に沿って働く筋肉では、絶えずエネルギー加熱になって発散されます。自動車のエンジンが動くと熱くなるのと同じです。私たちも食事をすると然くなりますが、これも代謝が活発になって、熱が発生して体温を上げるからです。

さて、このように代謝のときに働く酵素は、温度が上がると仕事のスピードもアップします。つまり私たちが食事をすると酵素がもりもり代謝をはじめて、体温が上がるのです。その理屈でいくと、こうして体温が上がった分、また酵素が頑張って代謝をスピードアップさせ、それで体温が上がって、その分さらに酵素がパワーアップして……と体温がらせん階段のように上昇していくことになりそうですね。そんなふうに体温が上がっていくと、いったい最後はどうなるのでしょうか。

例えば、今、体温が10℃上がったと考えてみましょう。そうすると、細胞の中での代謝のスピードは2倍になります。しかし、実際には私たちの体温が10℃上がることはありません。

それは、約45℃で身体の大事な成分であるタンパク質が変性して破壊されてしまうからです。体温計の目盛りのL限が50℃もないのはこのためです。

私たちは食事のたびに熱が上がって死んだりはしませんね。

なぜでしょう?

それは、私たちが身体の熱を上手にコントロールしているからです。

人間はある一定の範囲で体温を調節しないと生きていけないようになっています。これが「恒温動物」と呼ばれるゆえんです。体温が上がりすぎるのもいけませんし、下がりすぎても代謝の速度は落ち込んでしまいます。体温が33℃くらいに下がると意識がなくなり、28℃を下回ると臓器の生理的な動きは全てストップします。

もちろん、体温がここまで極端に変化するのは滅多にないことで、ふだん私たちの身体は37℃前後に保たれています。その理由は、私たちの脳と関係があります。

人間が他の動物と違う点は、脳が非常に発達していることです。それだけに、脳は人間の身体のうちで一番エネルギーの代謝が活発な場所ですが、その活発な代謝を可能にしているのは、やはり酵素のおかげです。

ただし、脳の酵素は温度に対して特に敏感な性質ですので、温度がフラフラと上下しているようだと、安定して働いてはくれません。そこで、脳の酵素が一番活躍しやすい37℃前後に体温を保つ必要があるのです。

ですから、人間の体温とは、つきつめれば「脳温」のことであり、汗腺は脳の温度を一定にしたいがため、日々「汗をかいて」働いているのです。



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